越前「銀杏峯(山スキー)」
space
space
060312_1060312_2
space
左 林道から尾根に取り付き視界が広がる(大野平野)、右 振り返って、登ってきた尾根と遠景
space
space
060312_3060312_4
space
左 快適な尾根が続く、右 銀杏峯山頂を目指して気持ち良い漫歩
space
space
060312_5
space
銀杏峯山頂
space
060312_6
space
space
space
space
 銀杏峯(げなんぽ)、愛らしい名前の山である。その姿もたおやかに稜線を広げた柔らかな山で、何となくその名と合っているように思う。隣りには部子山という同じようなスケールの山が並び立っており、この日も銀杏峯から部子山へと往復する登山者の姿も見られた。部子山(へこさん)という名も何とも愛嬌のある名前だ。
 銀杏峯には10年近く前に山スキーで登っているが、もうあまり記憶がない。天気は悪かったものの、素晴らしい雪質に恵まれて楽しいスキーができた思い出が残されている。ただ、ガスる稜線で方向を失いそうになりながら下ったので、天気が悪ければ要注意だなと思っていた。
 予定の日曜日は雨の予報。悪天候はどうしても避けたかったので、急遽、土曜日に変更。3時起きというハードな目覚めで名神から北陸を飛ばした。おかげで8時には出発ができたので、好天と相まって頂上への距離がぐんと近くなったようだ。
 宝慶寺手前の水車の回る峠茶屋から取り付いた。林道が800m地点くらいまで伸びているので、しばらくはこの林道を使って高度を稼ぐ。暗い杉林の中のまっすぐに登る林道を進むと、道はやがて小さくカーブを繰り返し、ヘアピン状に大きく切り返して山腹を回り込んでゆく。この小さなカーブをショートカットし、山腹を回り込んで尾根の頂点となるV字状にカーブするところから尾根へと上がった。ここは標高590mあたり、頂上まで標高差850mである。
 ここまででもう汗びっしょりとなっていた。快晴とまではいかないが、青空が広がる暖かい天気に気分も軽い。しかし、天気が良かったら良かったで、今度は雪の状態が心配となる。でもそんなことは考えても仕方がない、ただただ高見へと目指すだけだ。
 尾根はかなりの急登で、ジグザグの登りを繰り返した。一度林道のヘアピンカーブをかすめて急登を続ける。田代さんは寝不足のせいかピッチが上がらないので、男二人が交替でリードし、安定したピッチを刻んで登った。997mを超えたあたりで二度目の休憩を入れたが、このあたりで植林帯から自然林へと変わっていく。そして尾根は斜面状の広がりから明確な尾根の形をなすようになり、見事な稜線を作り出していた。樹林もまばらとなり、たっぷりと雪を載せた雪面が広がっている。頂上直下から志目木谷を下る予定だが、この魅力ある尾根には心を惹かれた。描かれた下りのシュプールを見ると、なおさらである。そういえば前回来たときは頂上稜線はガチガチにクラストしていたが、この尾根へと入ったとたん、ふかふかの雪と変わり、こんなにも山スキーは楽しいものなのかと、思い知らされたところである。重い雪と急な登りが続いて疲れが出てくるが、この素晴らしい尾根は、そんな倦怠感も吹き飛ばしてくれるような美しさだった。
 1250m付近でたおやかな頂上稜線に飛び出すが、ここまで登ると一安心。風も弱く広い稜線に乗ったところで後続を待った。白山や経ヶ岳、荒島岳など、素晴らしい山々眺望が広がっているが、空は霞んだようにぼんやりとしていた。ここからは揃ってゆっくりとしたペースの稜線漫歩。前方の大きな頂上への斜面には二人の登山者が見えていた。
 1350mの小さなピークは右から斜面をトラバースする。雪が堅ければ嫌なところだ。トラバースが終わったコルから最後の登りとなり、急登を一登りすると、右に志目木谷を見下ろしながらゆるやかな斜面を進んだ。志目木谷には先週のものか、薄くシュプールが残されていた。ここから下ることになるのだろうと谷の全貌を見渡したが、下部は見えない。やはり谷を下るのは不安な気持ちが湧いてくる。
 平らな頂上台地の端が小さく盛り上がり、祠が祀られているところが頂上だった。そこだけはもう地肌が出ている。12時過ぎなので4時間の行程、思ったより早く着いたようだ。
 今日はあまり風もなくゆっくりと昼が楽しめた。いつも通り、荒川氏持参のビールの一口が回り、缶を傾けて見上げる青空の爽快感がたまらない。いつもと同じ頂上だが、山スキーで登った頂上での気持ちは一味違うように思う。
 しかしこの青空も、昼の間に空は徐々に雲が広がり、風が吹きだして天候の変化の兆しが出始めた。下りは頂上のすぐ下から谷へと飛び込んだ。急斜面の怖さはないが、加速するスピードに負けて何度か尻餅をつく。雪も重たくて思うように滑れず、先週の華麗なシュプールがうらめしい。しかし、下るにつれ雪は少しは安定してきたし、傾斜も弱まってきたので、よしこれでと思う間もなく、所々で横から落ちてきたデブリが邪魔をする。見る見る高度を下げ、途中でひと息入れて見上げると、もうこんなに下ってしまったのかと驚かされる。思うにまかせないままここまで下りてしまった。でも華麗にとはいかないまでも、何とか無事に下れた。田代さんも念願の志目木谷を下れたのが嬉しそうだが、もう少しコンディションが良ければと残念そう。
 問題はここから下だ。所々で流れが口を開けているので気を付けながらゆっくりと下った。堰堤が見えるが雪が続いているかどうか分からないので、右岸側斜面をトラバースして行く。1つ目の堰堤は右岸側を越えたが、左岸側には林道が続いていた。そのまま右岸側を進み、2つ目の堰堤の手前で流れを渡り林道へと上がるとさらに3つ目が見えており、林道は堰堤の手前で橋を架け右岸側へと渡っていた。どうやらこの先で登り始めた林道につながっているようなので一安心。
 登りの林道と合流して休憩を入れた。もうあとは緩い林道を下るだけだと思うと開放感が広がる。何とも心地よいひとときだ。
 最後の林道をゴールへと目指して滑っていると、頭の中には次なる山がよぎり始めていた。(文・ルート図=草川、写真=田代)

・日 程=3月11日(土)
・コース=宝慶寺手前・茶屋(8:00)〜山頂(12:15〜13:10)〜茶屋(15:00)
・参加者=草川啓三・荒川聖一・田代妙子
space

space
space
「個人山行」のページへ戻る
space
space
space
contents
space
to_top
space